わが心臓の痛み Blood Work

Heart and its Blood Vessels, Leonardo da Vinci
Heart and its Blood Vessels,
Leonardo da Vinci

FBIの心理分析官テリー・マッケイレブは長年、連続殺人など多くの難事件に取り組んできたが、1996年4月、たび重なる激務とストレスによって心筋症が悪化し、深夜のオフィスで倒れてしまう。早期引退を余儀なくされた後、1998年2月にようやく血液型の合致するドナーが現れ、心臓移植手術を受ける。

それから8週間が過ぎたある日、退院していた彼のもとにグラシエラという女性が現れ、マッケイレブの心臓のドナーはコンビニ強盗により絶命した妹だと語る。かれは事件の調査依頼を引き受け、強盗殺人犯を追い始める。悪を許さない強い憤りに駆り立てられたマッケイレブは、すべての事件を時系列に検討するなど、病をおして執念の捜査を続けるが、やがて明らかになる真相はかれ自身を巻き込んでいった。

ブラッド・ワーク(Blood Work)の直訳は「血の任務」である。

「やがて原題の〈ブラッド・ワーク〉という言葉が象徴していたもう一つの意味と、真犯人の意図が明らかになり、最終的な事件と個人の究極的な関りが判明する。この先は実際に読んでいただくのが一番だ。コナリーのあきれるほど上手いストーリー・テラーぶりを堪能してほしい。予想以上のショックをマッケイレブと彼の後を追う読者に与え続けるのである」(西上心太氏の解説より)

わが心臓の痛み〈上〉 (扶桑社ミステリー)わが心臓の痛み〈下〉 (扶桑社ミステリー)

本作は「ザ・ポエット」以来のスピンアウト(外伝)作品であり、マッケイレブが主人公である。この事件で、ボッシュはほんのチョイ役で登場するのみ。マッケイレブとボッシュの軌跡は、この後のシリーズで再び交錯することになる。これから3年後の「夜より暗き闇」、さらに3年後の「天使と罪の街」に期待されたい。

ふたりの邂逅の全軌跡は、こちらを参照。

なお、本書は1999年度アンソニー賞、1999年度マカヴィティ賞(国際ミステリ愛好家クラブ主催)、フランス推理小説大賞、2000年度ドイツ・ミステリ大賞翻訳作品部門受賞(第3位)、エドガー賞長編賞ノミネートなどの輝かしい評価を獲得した。内容はまことに、それらの評価に相応しい出来であろう。

また本作は、クリント・イーストウッドの製作・監督・主演により、2002年に映画化された。ワーナー配給で、タイトルはそのまま「ブラッド・ワーク(Blood Work)」である。西上心太氏の解説のなかで、所感が披露されているので紹介したい。

「原作と同様、ロサンジェルス地域でロケが行われ、わずか38日間で撮影されたとふう。さすがにイーストウッドも高齢で、かつての『ダ-テイハリ-』の時のような溌剌とした躍動感はないけれど、大手術後の身体をいたわりながらの捜査活動というシチュエーションのため、不自然さはまったく感じられない。

脇役陣ではマッケイレブの担当医師ボニー・フォックス役のアカデミー賞女憂アンジェリーカ・ヒューストンが、出番は少ないものの流石というべきな存在感を示している。また映画の内容は原作にほぼ忠実で、しかもいかにも映画的なツイストが用意されているので、原作を読んでから観ても、何ら不満を覚えることはないであろう」



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投稿者: heartbeat

管理人の"Heartbeat"(=心拍という意味)です。私の心臓はときおり3連打したり、ちょっと休んだりする不整脈です。60代前半。夫婦ふたり暮らし。ストレスの多かった長年の会社勤めをやめ、自由業の身。今まで「趣味は読書」といい続けてきた延長線で、現在・未来の「同好の士」に向けたサイトづくりを思い立ちました。どうぞよろしくお願いします。