ミッキー・ハラー(Michael “Mickey” Haller)は、高級車リンカーンの後部座席を事務所代わりにしてLAを駆け巡る、刑事事件が専門の弁護士である。犯罪常習者や子悪党タイプをクライアントにして、細々と報酬を稼ぐスタイルで生計を立てている。しかし刑事弁護士としての実力は高く、タフで、現実主義的な側面はむしろクライアントたちから歓迎されており、「ある種の業界」内では頼りにされる存在といえる。
2005年3月、40歳となっているハラーに、暴行容疑で逮捕された資産家の息子から弁護依頼が舞い込む。ハラーとすれば、久々に多額の報酬が見込めるラッキーな案件と思えた。しかし、事件を調べるうちに、かつて弁護を手がけたある裁判にたどりつき、自ら疑いを抱くことになる。もしかすると、自分が有罪と思いこんで服役に追いやった依頼人は、実は無実だったのではないか、という疑問である。
思い悩むハラーの行く手に待ち受けていたのは狡猾な罠だった。ハラーは絶体絶命と見える状況下で、法廷に挑むことになる。はたしてどのような勝算があるのか。息つくひまのない法廷シーンが展開し、圧巻のラストに向かっていく。主人公に自分の名前を与えたコナリーが、まさに新境地を拓いた作品である。コナリー・ワールドの拡大は止まることを知らない。
主人公ミッキー・ハラー(Michael “Mickey” Haller; 1965年生まれ)は、弁護士だった父親、マイクル・ハラー(J. Michael Haller)から同じ名前をもらっている。ここまで読み進んだ方には、明かして差し支えないだろうが、シニアのマイクル・ハラーは、ハリー・ボッシュ(1950年生まれ)の父親でもある。すなわち、ハリー・ボッシュとミッキー・ハラーは15歳違いの異母兄弟である。だが、本作の事件が始まった時点では、ふたりともお互いの存在を知らない。
本作は、2006年度マカヴィティ賞、2006年度シェイマス賞最優秀長篇賞(アメリカ私立探偵作家クラブ主催)を受賞したほか、エドガー賞長編賞にノミネートされた。
また、本作は2011年、ブラッド・ファーマン監督、マシュー・マコノヒー主演、タイトルは原著のままで映画化され、好評を博した。(ライオンズゲート配給)。訳者の古沢嘉通氏の所感を紹介させていただく。
「主演のマコノヒーの演技がじつにいい。清濁併せのむ、ちょいワル弁護士をクールに演じている。今後このシリーズを読む際には、この映画でのマコノヒーの姿が自然に浮かんでしまうだろう。原作ファンもマコノヒー・ファンも、そうではない映画ファンも、充分楽しめる作品に仕上がっていると保証する」