ボッシュ・シリーズと音楽 その3

シリーズ始まりの4連作・完結編「ラスト・コヨーテ(The Last Coyote)」でも、じつに多彩な音楽が、背景やそれ自体をモチーフとして使われている。

クリフォード・ブラウン・ウィズ・ストリングス まずはボッシュの日常風景から・・・「ボッシュはダイニングのテーブルからふるい郵便物と日曜大工関係の書籍をとっぱらい、バインダーと手帳をのせた。ステレオのところにいき、コンパクト・ディスクをかける――《クリフォード・ブラウン・ウィズ・ストリングス》」 ―― Clifford Brown, “Willow Weep For Me” in “Clifford Brown With Strings”(CD) (中略)「彼のトランペットは、肖像画家の筆のように柔らかだった」

ザ・ポピュラー・デューク・エリントン33年前の母親の事件を調べるボッシュはその日、暗くなってからブロードウェイを南下してある店に入る・・・「奥のちいさなステージではクインテットが演奏していた。リードはテナーサックスだ。バンドは、《ドゥ・ナッシン・ティル・ユー・ヒア・フロム・ミー》の演奏を終わろうとしており・・・」 ―― Duke Ellington, “Do Nothing Till You Hear From Me” in ” The Popular Duke Ellington”(CD)

この素晴らしき世界そのあと、「・・・バンドは、《この素晴らしき世界》に移っていた。(中略)ボッシュは歌詞を覚えていた・・・(ここに6行の歌詞が挿入される)・・・その歌はボッシュを孤独にさせ、悲しくさせたが、それはそれでかまわなかった」 ―― Louis Armstrong, “What a Wonderful World” in “What a Wonderful World”(CD)

You Gotta Pay The Band次いで、いつものように自宅に向かうボッシュ。「ラジオをつけ、DJがアビー・リンカーンの歌を紹介するのを聞いた。その歌を耳にするのははじめてだったが、すぐに歌詞と女性歌手の低いしわがれた声が気にいった」 ―― Abbey Lincoln, “Bird alone” in “You Gotta Pay the Band”(CD)

R.コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」 「ボッシュは、自分が幼く、まだ母親といっしょにいたころのことを思い返した。(中略)母は、いつかハリウッド・ボウルに《シェヘラザード》を聴きにあんたを連れてってあげる、といつもボッシュに話していた。それは、母のお気にいりの曲だった」 ―― Nikolai Rimsky-Korsakov, “Scheherazade” in “Scheherazade”(CD) performed by Charles Dutoit / Montreal Symphony Orchestra

ボッシュは、母親とはついに行けなかった《シェヘラザード》の演奏をある時、恋人と聴きにいく・・・「シルヴィアは、ボッシュの目に涙がこみあげているのを見て、音楽の純粋な美しさゆえだと思った。ボッシュは、別の理由があることはあえて彼女には告げなかった」

Midnight Love 調査のためひそかにマイアミに飛んだボッシュと、ある女性との会話の中でマーヴィン・ゲイの歌が話題となる。そのできごとは後日、LAでの別人との会話にも使われる・・・「マーヴィン・ゲイが歌っていたあの歌を聴いたことがあるか?彼が殺されるまえに作ったあの歌を?確か・・・」 ―― Marvin Gaye, “Sexual Healing” in “Midnight Love”(CD)

Blue Valentineロサンジェルス地震で自宅が半壊してしまったボッシュは一時、ホテル暮らしを余儀なくされ、荷物を部屋に運びこむ。ステレオをあるべき場所に設置したあと、「CDの箱をかきまわして、《ブルー・ヴァレンタイン》というタイトルのトム・ウェイツのCDを取り出した。もう何年もそれを聴いたことがなかったので・・・」 ―― Tom Waits, “Blue Valentine”(CD)

 

ボッシュ・シリーズと音楽 その4 につづく。

 

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投稿者: heartbeat

管理人の"Heartbeat"(=心拍という意味)です。私の心臓はときおり3連打したり、ちょっと休んだりする不整脈です。60代半ば。夫婦ふたり暮らし。ストレスの多かった長年の会社勤めをやめ、自由業の身。今まで「趣味は読書」といい続けてきた延長線で、現在・未来の「同好の士」に向けたサイトづくりを思い立ちました。どうぞよろしくお願いします。