2007年3月、その半年前の「エコー・パーク」事件の余波で、ボッシュは殺人事件特捜班(the Homicide Special Section)に異動していた。負傷もあって本部長室勤務になっ
たキズミン・ライダーに代わり、若いイグナシオ・フェラス(Ignacio “Iggy” Ferras)がパートナーになった。
新チームはマルホランド展望台(the Mulholland Scenic Overlook)で発見された射殺体の事件に出動する。そこでボッシュは、FBI捜査官レイチェル・ウォリングと再会し、テロリストが関与している可能性を知る。犠牲者は、妻を殺すと脅迫されていた医学物理士で、病院から癌治療用の放射性物質セシウムを持ち出していたのだ。
ボッシュはFBIの介入に阻まれながらも、ひたすら犯人を追う。殺人犯が見つかればセシウムも見つかると考え、FBIと渡り合いつつ徹頭徹尾、「これは殺人事件だ。俺の事件だ」という姿勢をつらぬく。12時間のスピード感あふれる緊迫の捜査が描かれる。
原題のThe Overlookは、直接的にはもちろん、犯行現場のマルホランド展望台(the Mulholland Scenic Overlook)を指すが、動詞の “overlook”には「見落とす」とか「見過ごす」「逃す」といった意味があり、なにかを見落としていたことを示唆している。
コナリーは、本シリーズのエピソードを短篇としてあちこちで発表しているが、本作はそれらとは別に、ニューヨークタイムズの日曜版に連載されていたものをベースにしており、短篇よりは随分と語数があって、一応長編として出版されたもの。シリーズのなかでは、内容、出版形態ともに異色の作品といえる。
More from my site
ボッシュ・シリーズと音楽 その14 「電話は深夜にかかってきた。ハリー・ボッシュは照明を落としたリビングで起きており、腰を下ろしていた。サキソフォンの音色をよりよく聞けるからこうしているのだ、と考えたかった」 いつ […]
ボッシュの履歴書(8) ひとときの居場所 1996年1月、ボッシュは18ヶ月の強制休職処分を終え、ハリウッド署盗犯課に復帰。その後9月1日に同署殺人課にもどってきた。ボッシュ46歳。こんどの上司はグレイス・ビレッツ(Gr […]
ボッシュ・シリーズと音楽 その11 「終結者たち(The […]
トランク・ミュージック Trunk Music 1996年、ボッシュは上司への暴行を理由とする18ヶ月の強制休職処分を終え、ハリウッド署盗犯課を経て同署殺人課に戻ってきた。ボッシュ46歳。新しい上司は、何となく感じの良さそうな […]
エレノア・ウィッシュ その2 エレノア・ウィッシュは一度結婚し、ボッシュと出会う何年か前に離婚していたとされる。彼女は離婚後も、旧姓のスカルラッティ(Scarletti)に戻らず、元夫の姓(Wish)を名乗り […]
レイチェル・ウォリング その2 レイチェル・ウォリングは、クォンティコでさまざまなプロジェクトに取り組み、経験を積んだ。その一つは彼女自身の父親の死を踏まえた、警察官の自殺についての研究であった。また別のプロジ […]
投稿者: heartbeat
管理人の"Heartbeat"(=心拍という意味)です。私の心臓はときおり3連打したり、ちょっと休んだりする不整脈です。60代半ば。夫婦ふたり暮らし。ストレスの多かった長年の会社勤めをやめ、自由業の身。今まで「趣味は読書」といい続けてきた延長線で、現在・未来の「同好の士」に向けたサイトづくりを思い立ちました。どうぞよろしくお願いします。
heartbeat のすべての投稿を表示