1992年12月、ボッシュ42歳。麻薬課の刑事ムーアの死体がモーテルで発見された。一見、ショットガンによる自殺と判断できる状況であったが、検視によって偽装と判明する。ボッシュはひそかに事件を追うが、ムーアの身辺を洗った結果、事件の背後に新種の麻薬「ブラック・アイス」をめぐる麻薬組織の抗争が絡んでいたことを突き止める。ボッシュはさらなる手がかりを得るべく、麻薬王ソリージョのいるメキシコへと向かう。
前半では複数の地道な事件捜査を並行して描き、後半からメキシコを舞台にしたアクションの要素を強めつつ、ラストの巧みな謎解きへとダイナミックに展開していく。ボッシュは、客観的な観察者として、事件関係者の心の暗部を探っていくが、自分自身の内面と向き合うことをけして忘れることはない。
本作の鍵となる部分は、死亡したムーアが遺したただ一行のことばである。「おれは自分がなにものかわかった」と記してあった。事件の手がかりであると同時に、「自分がなにものか」こそボッシュ自身につきつけられた言葉であった。捜査を続けながら、つねにこの言葉を意識する。そして、かつてボッシュが、自分の出生を調査し、実の父親を探し当てた経緯を述べるシーンへとつながっていく。
過去を回想するシーンのなかでは、母親の死を聞いた日に、プールの底深くにもぐって声をあげて泣く11歳のボッシュ少年も描かれる。また、ボッシュは、麻薬を密売する少年たちを見て、自分自身が養護施設で過ごした記憶を蘇えらせる。そのときに何度も感じた、「まじりっけなしの恐怖と、悲鳴をあげたいほどの孤独」を思い出すのであった。
本作は、ファルコン賞ハードボイルド大賞(日本マルタの鷹協会)を受賞した。なお、解説の関口苑生氏は次のようなエピソードを紹介している。本作刊行の当時、ミステリー好きとして知られるビル・クリントン大統領もこれを読んで非常に気に入り、続く第3作を出版前にねだって読むなどシリーズへの関心を昂じさせたうえ、ついには著者コナリーとの会見に及んだとのことである。
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投稿者: heartbeat
管理人の"Heartbeat"(=心拍という意味)です。私の心臓はときおり3連打したり、ちょっと休んだりする不整脈です。60代半ば。夫婦ふたり暮らし。ストレスの多かった長年の会社勤めをやめ、自由業の身。今まで「趣味は読書」といい続けてきた延長線で、現在・未来の「同好の士」に向けたサイトづくりを思い立ちました。どうぞよろしくお願いします。
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